発掘調査って何だろう

発掘調査って何だろう~まちの歴史を記録する発掘調査~

宮崎市文化財課では宮崎市内にある遺跡の発掘調査をおこなっています。発掘調査とは、遺跡を掘り下げながらその記録をおこなって、過去の人々の生活などについて調査することです。
発掘調査には、工事などにともなっておこなわれる緊急調査と、学術的な目的などをもっておこなわれる調査とがありますが、宮崎市ではおもに緊急調査をおこなっています。ここではその調査について触れていきたいと思います。

【遺跡とは?】

「遺跡」という言葉はよく耳にすることがある言葉です。ではこの「遺跡」とはどういうものを指すのでしょうか?
「遺跡」とは過去の人々が残した生活の痕跡などすべてを指す言葉です。「遺跡」は主に次の2つで成り立っています。

  • 「遺構」:古墳や建物の跡、溝など地面に掘り込まれたり、土が盛られたりしていてその場所から動かすことができないもの
  • 「遺物」:土器や石器などで、昔の人々が製作し使用した持ち運びができるもの

この「遺跡」には昔の人々の暮らしを知るために非常に大切な情報が詰まっています。ですから、「遺跡」はもともとの場所にずっと残されたままで将来まで伝えられていくことが最も大切なのです。

【とても大事な発掘調査】

遺跡はその場所にずっと残していかなければならないと書きました。ではなぜ文化財課では発掘調査をおこなっているのでしょうか。
それには私たちの生活が大きくかかわっています。現在私たちが生活するためには、道路や建物建築などさまざまな工事が必要です。しかし、その際に土の中に埋まっている遺跡が壊されてしまう場合があります。もし、遺跡が壊れてしまったら、そこにあった昔の人々の暮らしを知る手がかりは永久に失われてしまうことになります。そこで、工事がおこなわれる前に、そこに残された遺跡を掘り下げて記録だけでも残していこうという目的で発掘調査をおこなうのです。
この時に残された記録だけが、なくなってしまった遺跡のことを知るためのただ一つの情報となってしまいますから、何が、どの場所から、どのような状態で出土したのかなどの非常に細かい記録を残す必要があるのです。だからこそ、発掘調査では、人の手で丁寧に調査をしなければならないのです。

【発掘調査ってどのようにやっているの?】

発掘調査がはじまるまで
はじめに工事などがおこなわれる場所に遺跡があるのかどうかの確認をする必要があります。宮崎市には市内のどこに遺跡があるのかを示した地図があります。それらをみて、遺跡であるかどうかの確認をおこないます。その後に、実際にどのような遺跡があるのかを知るための小規模な調査(試掘・確認調査)をおこないます。
発掘調査がはじまったら
遺跡であることがわかったら本格的な発掘調査をおこないます。調査には色々な作業がありますので、その実際の作業の様子を紹介しましょう。

《表土剥ぎ作業》

現在の地面から遺跡がある深さまでは、遺跡とはあまり関係のない新しい土が積もっています。まず、この土を機械を使って遺跡がある深さまで掘り下げていきます。このときにも遺物が出土することがありますので、掘り下げている部分を注意深く見守ります。

ショベルカーで掘っている写真

少しずつ掘り下げていきます。

《遺構を見つける》

遺跡が存在する深さまで掘り下げたら、次は遺構(住居跡やお墓の跡などの生活の痕跡)を見つけるために土の表面を少しずつ削っていく作業をおこないます。遺構のある場所は周りの土と比べて土の色や硬さが違います。地面を削りながらよく観察することでこの違いを見つけていきます。下の写真の黒い土の部分が遺構です。周りの土と色が全然違っているのが良く分かりますね。

地面に黒い土の部分がある写真

平安時代の建物の柱跡でした。

地面に穴があいている写真

上写真左の柱跡を掘った状態です。

《遺構を掘り下げる》

遺構が見つかったならば、いよいよその掘り下げに取り掛かります。遺構の中に積もった土を取り除くようにして掘り下げていくと、その中からはたくさんの土器や石器などが出土します。遺構の形や遺物を傷つけないように慎重に掘り下げていきます。遺物は出てきたからと言ってすぐに掘りあげてはいけません。どこからどのようにして出土したかを記録するために、出土した場所にそのまま残しておきます。

何人かの人が遺構を掘っている写真
1人の人が遺構を掘っている写真

これは古墳時代の遺構です。たくさん出ている土器を壊さないように掘り進めます。

《記録をする》

遺構の掘り下げが終わると、次はその記録作業です。記録は遺構の大きさや形、深さ、遺物が出土した位置だけではなく、遺構の中に積もっていた土の様子や、土が焼けているなどの特徴的な部分などを写真撮影や図を描いておこないます。この記録が当時の人々の生活の様子を知る非常に重要な手がかりとなりますので、とても細かい記録が必要です。こうした記録作業が終わると出土した遺物はどこから出てきたのかを記録しながら取り上げていきます。

測量機械を使って記録している写真その1
測量機械を使って記録している写真その2

調査員の手で作図するほかに、測量機械を用いての記録もおこないます。

《埋め戻し》

すべての記録作業が終わると、掘り下げた遺跡を埋めて調査前の状況に戻して発掘調査は終了します。

【整理作業~発掘調査その後~】

発掘調査が終わると遺跡はなくなってしまいます。そのため、調査で見つかった遺構と遺物の記録だけが、その遺跡のことを知ることができる証拠になってしまいます。遺跡を初めとする文化財は国民共通の財産ですから、調査の結果を皆さんに知ってもらうために遺跡の発掘調査報告書を作ったり、遺物の展示をおこなったりしています。これらの作業を整理作業と言っていますが、ここからはその整理作業について紹介します。宮崎市が発掘調査した遺物の整理作業は生目の杜遊古館でおこなっていて、平日にはその様子を公開しています。

《水洗い作業》

発掘したばかりの遺物は砂や泥が付着しているので、まずこれを洗い落として遺物をきれいにする作業をおこないます。遺物に傷をつけないようにブラシで慎重に洗っていきます。

4人の女性が水洗いしている写真
ブラシを使って水洗いしている写真

水洗いの様子。泥が落ちると、遺物の様子がよく分かるようになります。

《注記》

遺物がどこから出土したものかが分からなくならないように、遺物一つ一つにどこから出土したのかを示す番号を書き込んでいます。虫眼鏡などを使いながら、細い筆で、細かい字を書く作業はとても集中力が必要な作業です。

何人かの人が番号を書いている写真
白い文字の書かれた土器の写真

注記作業の様子。土器に書かれた小さな文字が見えますか?

《接合・復元》

遺跡から出土する遺物は、そのほとんどが割れてしまった状態です。これらをつなぎ合わせて(接合)元の形に復元していきます。たくさんの破片の中からつながり合うものを見つけるのは、非常に難しいですが、色や厚み割れ口の形などをしっかりと観察することがポイントです。

土器をつなぎ合わせている写真

石膏なども使いながら復元します。

《実測作業》

遺物の復元が終わったら、これらを図に描いていきます。土器などの作り方や、使われ方などがよく分かるような図を描かなければいけません。当時の人々がどのように土器や石器などを作ったり使ったりしていたのかを想像しながらじっくりと観察し、その結果を図にします。この図のことを実測図と呼んでいます。

女性が実測している写真
方眼用紙に描かれた実測図の写真

実測は遺物をよく観察して。観察したことは右写真のように実測図に書き込みます。

《遺物写真撮影》

遺物の写真を撮影します。どれをどのように写せば遺物のことがよく伝わるのかのかなどに注意しながら、写真を撮影していきます。実測図とは違って、遺物の色合いや質感などを伝えることができます。

遺物の撮影をしている写真

写場の様子です。

《報告書作成作業》

遺物の実測などの基本的な整理作業が終わったら、報告書を作成します。報告書とは、発掘調査成果の文章や実測図、写真などを1冊の本にまとめたものです。報告書は生目の杜遊古館のほか、図書館などでどなたでもご覧になることができます。

報告書の写真
製本された報告書の写真

実測図や写真などは左写真のように製図・編集をします。右が完成した報告書です。

《展示》

発掘調査の成果は報告書にまとめるだけではなく、出土した実物の遺物や、調査の様子のパネルなどを展示して、皆さんに見ていただけるようにしています。このような展示は生目の杜遊古館をはじめ、市内の各資料館でご覧いただけます。

展示室の写真
保管室の写真

展示の様子(左写真)。その他にもたくさんの遺物を収蔵・保管しています(右写真)。

以上で、発掘調査から整理までの大まかな作業の様子を見ていただきました。発掘調査について少しでも知っていただけたならば幸いです。文化財は私たちが暮らしている地域の成り立ちを知る上で欠かすことのできない、かけがえのない遺産です。それは今も私たちの足元に眠っているのです。文化財課では、この貴重な遺産である文化財を守っていく活動をこれからもおこなっていきます。
また、実際の発掘現場や整理作業の様子はどなたでもご覧いただくことができますので、ぜひ足を運んでください。そして、過去の人々の暮らしを直接見て、触ってください。きっと私たちの土地に流れる永い永い歴史との出会いと感動が待っています。

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