-------------887text12------------- 特集2 郷土の偉人シリーズ 佐土原町出身の外交官 「根井 三郎」Saburo Nei 「命のビザ」をつなぎ数多くのユダヤ人を救う 第2次世界大戦のさなか、数千人のユダヤ人などを 救ったとされる杉原 千畝(1900~86年)の 人道的な行いは世界的に有名です。 近年、この功績に関する新たな資料が明らかになり、 佐土原町出身の外交官 根井 三郎(1902~92年)の功績が注目されています 。 宮崎市内でもその功績を伝える活動が始まっています。 写真提供:根井三郎を顕彰する会 世界的に評価の高い杉原千畝 近年明らかとなった根井三郎  第二次世界大戦中の1940年夏に、 在リトアニア日本領事代理であった杉原千畝は、多くのユダヤ人などを救ったとされ、「日本のシンドラー」として広く知られています。        ナチス・ドイツの迫害から逃れようと、旧ソビエト連邦から日本を通過し、他国への避難を望んだユダヤ人などへ、通過査証(ビザ)を発給したのが杉原千畝です。当時の世界情勢を考えると、この対応は希少なものだったと、救われたユダヤ人は、今も杉原千畝をたたえ続けています。また現代の日本でも、この人道的な行いは高く評価され、現在、ユネスコ世界記憶遺産への登録が進んでいます。      このユダヤ人などを救った人道的な行いに、杉原千畝以外の日本人が大きく関わっていたことが、近年明らかになりました。    その一人が佐土原町出身の外交官で当時ウラジオストク日本総領事代理だった、根井三郎です。 ウラジオストクの旧日本総領事館 シベリア鉄道ウラジオストク駅 国からの命令に「面白からず」と異を 唱えた根井三郎の行いが明らかに  1941年3月、ウラジオストク港は、日本行きの船を待つユダヤ人であふれていました。ウラジオストク日本総領事館に本国から「杉原千畝が発給したビザを厳格に再審査し、不備ある場合は船に乗せてはならない」と命令が下っていたからです。  総領事代理だった根井三郎は大変苦悩しましたが、3月30日に「一度は国が認め発給したビザを覆すことは国の信用に関わる、面白からず(良くない)」と本国に電報を送り、ユダヤ人を日本行きの船に乗せる決断をしたのです。  杉原千畝が発給したビザが、まるでリレーのように根井三郎に渡り、ユダヤ人の命をつないだことから、この史実を「命のバトン」と呼ぶ研究者もいます。根井三郎が「命のバトン」をつながなかったら...。たくさんの命は失われていたかもしれません。 根井が外務大臣を兼務する近衛文麿に送った電報(1941年3月30日付) ウラジオストク港 ユダヤ人が乗船した天草丸 -------------887text13------------- 「命のバトン」をつないだ人々 ドイツ ポーランド リトアニア モスクワ シベリア鉄道 難民の主な移動ルート ウラジオストク 敦賀(つるが) 難民は日本から世界各地へ リトアニア ユダヤ人難民へビザを発給 杉原 千畝(すぎはら ちうね)1900~1986年 写真提供:杉原伸生  岐阜県出身。第2次世界大戦中、日本領事館領事代理として赴任していたリトアニアで、ナチス・ドイツによって迫害されていた多くのユダヤ人などにビザを発給し、避難民の救済に尽力。「日本のシンドラー」とも呼ばれている 。  多くのユダヤ人の命を救出した功績が明らかとなり、1985年にイスラエル政府は千畝に「諸国民の中の正義の人賞」(ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害から自らの生命の危険を冒してまでユダヤ人を守った非ユダヤ人に感謝と敬意を示す称号)を贈る。 ウラジオストク 本国の命令に反論し日本への渡航に尽力 根井 三郎(ねい さぶろう)1902~1992年 写真提供:根井三郎を顕彰する会  佐土原町出身。本国からの命令に反論し、杉原千畝が発給したビザを持つユダヤ人難民の日本行きを認め、ビザを持たない者へは渡航証明書を発給した。 根井が発給した渡航証明書 写真提供:人道の港調査研究所 日本 滞在期間の延長に尽力 小辻 節三(こつじ せつぞう)1899~1973年 写真提供:山田純大  京都府出身。ユダヤ教研究者。ドイツを追われたユダヤ人難民が「命のビザ」を発給され、ウラジオストクから日本に到着しても 、そのビザで許された日本滞在は10日間だけ。小辻は外務省、自治体を奔走して滞在延長を可能にし、また難民が安全な国へ渡航できるよう船便の確保にも尽力した。 根井三郎の功績をたたえ 地元に「顕彰する会」も発足  佐土原町出身の根井三郎が成した人道的な行いを、まず皆さんに知ってほしいと、昨年8月4日に「根井三郎を顕彰する会」が発足しました。  現在顕彰会では、資料の収集を行いながら、市民への広い周知活動を行っています。発足間もない9月24日には、根井三郎顕彰講演会を開催し、今年から出前講座も行っています。  根井三郎の功績を紹介する出前講座は随時行いますので、お問い合わせください。 情報収集とともに積極的な発信もしていきたい  顕彰会では、外交官根井三郎を多くの市民に知ってもらう活動を行いながら、情報収集にも努めています。  根井三郎の情報はまだまだ少なく、どんな小さなことでも知りたいのが現状です。これからも情報の収集と発信を、継続して行っていきます。  根井三郎を顕彰する会 根井 翼(ねい よく)会長 問 佐土原・地域総務課 根井三郎を顕彰する会 ☎73-1411