[特集2] どうする?公共施設  市は、これまで、人口増加や市民ニーズの多様化などに対応するため、さまざまな公共施設を整備してきました。そして現在、人口減少や老朽化などの問題で公共施設の在り方の見直しを進めています。 [問い合わせ先]財政課 電話21-1723 Aさん 21歳・大学生 必要ないならなくしてもいいんじゃないんでしょうか Bさん 39歳・二児の母 交流できるような公共の場は残してほしいと思うわ Aさん 公共施設を見直してるって本当? 職員 はい。少子高齢化による人口減少(※①)や社会保障費の増加(※②)、利用者の減少のため、すべての施設の保持は難しいと判断し、見直しています。 Bさん 少子高齢化が進むと、なぜ施設の保持が難しいの? 職員 公共施設は市民の皆さんの税金に支えられています。今後は、人口や税収入が減る一方で、社会保障費が増えていくことが確実なので、福祉や教育のサービスを削らないためには、人口に合わせて公共施設の量を調節しないといけません。 Aさん そもそも、公共施設って何に費用がかかってるんですか? 職員 通常の管理費と修繕更新費用[大規模な修繕と建替費用(※③)]です。全ての施設を保持しようとすると、一年当たりの修繕更新費用は平成25年度予算の2.4倍になります。 Bさん これから、公共施設はどうなるの? 職員:処分・再配置・経営の改善などを含めて抜本的に在り方を見直しながら、公共施設の全体の量を調節していきます。 Bさん フローランテや科学技術館、大淀川学習館、動物園のように子どもとよく行く施設は、残してほしいんだけど…。 職員 そういった人気の高い施設も例外ではありません(※解説 参照)。 Aさん 見直す施設は何を基準に決められるのですか? 職員 利用者数や費用、築年数、民間や市の施設との重複などを基準にしています。 Bさん それだと、利用者が限られる地域の施設だけが減るんじゃないのかしら? 職員 そうならないように、さまざまな角度から検討しています。市民の皆さんのご意見をお聞きするために、平成25年12月にアンケート(※④)も実施しました。 Bさん それでも、公共施設を見直すってことは、結局のところ、私たちが不便になるってことでしょ? 職員 確かに、公共施設の在り方が変わることは私たちにとって「痛み」なのかもしれません。しかし、公共施設の費用を、福祉や教育などのサービスに振り替えることができれば、暮らしをもっと便利で快適なものにできます。 Aさん 宮崎市が住みやすいまちであり続けるための見直しということですね。 職員 そして、その恩恵は将来世代にも受け継がれます。現役世代も将来世代も笑顔でいられる宮崎市を、一緒に作っていきませんか? 市の人口は30年で5万人減少! 子ども・働き手 約9万人減少※① 高齢者 約4万人増加 Aさん こんなに人口が減るの!?将来の人口や年齢層を考えると、公共施設の数が今のままだと効率が悪いね 国立社会保障・人口問題研究所によると、現在40万人が暮らす宮崎市は、2040年に35万人程度に減少する見込みです。 少子高齢化・老朽化で負担が増大! 社会保障費も増加!※② 25年度当初予算1,527億円のうち社会保障費(繰出金含)は567億円で1/3以上 修繕更新費も増加!※③ 全ての施設を修繕しようとすると平成25年度予算修繕更新費用49億円の2.4倍必要(※1年あたり116億円) Aさん 社会保障費や老朽化した施設の修繕費用は削れないしね… Bさん そう考えると、全ての施設を保持するのは難しいわけね 普通会計全体に占める社会保障費の割合と社会保障費の推移 平成23年決算 社会保障費の割合 35.9% 社会保障費の推移 541億円 平成24年決算 社会保障費の割合 36.7% 社会保障費の推移 564億円 平成25年予算 社会保障費の割合 37.2% 社会保障費の推移 567億円 解説 あの人気施設はどうなの? Bさん 人気のある施設でも問題を抱えているものなのね 高い負担額 フローランテ宮崎 フェニックス自然動物園 フローランテは「花のまちづくりの推進拠点」として平成12年に開園。動物園は平成13年から市民に憩いの場を提供してきました。両施設も、入園者数は増加傾向ですが、市の負担額が高い状態です。 老朽化 宮崎科学技術館 大淀川学習館 宮崎科学技術館は「科学と遊ぶ」をテーマに、昭和62年に開設。大淀川学習館は大淀川学習のシンボルとして平成7年に開設。どちらも老朽化が見える部分もあり、将来多額の修繕更新費が見込まれています。 見直しは市民の声を聞きながら!※④ 宮崎市の公共施設に関する市民アンケート(2,000人対象) 公共施設に関する課題解決に向けて、平成25年12月に市民意向調査を行いました。 将来にわたって残すべき公共施設ランキング 「市の負担額が高くとも、利用者数が多い施設」は残すべきだと、市民の多くは考えています。 上位の主な施設 1位 施設名 夜間急病センター 建物の平均築年数(平成24年度現在) 民間からの借受施設 年間利用者数(平成24年度) 24,379人 市負担額(平成24年度) 5,191万円 2位 施設名 宮崎市民文化ホール 建物の平均築年数(平成24年度現在) 16年 年間利用者数(平成24年度) 295,129人 市負担額(平成24年度) 2億2,473万円 3位 施設名 フェニックス自然動物園 建物の平均築年数(平成24年度現在) 23.5年 年間利用者数(平成24年度) 326,074人 市負担額(平成24年度) 3億1,187万円 4位 施設名 宮崎市立図書館 建物の平均築年数(平成24年度現在) 18年 年間利用者数(平成24年度) 303,833人 市負担額(平成24年度) 1億6,834万円 5位 施設名 いきめの杜運動公園 建物の平均築年数(平成24年度現在) 8.9年 年間利用者数(平成24年度) 278,596人 市負担額(平成24年度) 1億8,047万円 6位 施設名 宮崎科学技術館 建物の平均築年数(平成24年度現在) 25年 年間利用者数(平成24年度) 144,715人 市負担額(平成24年度) 1億7,367万円 7位 施設名 フローランテ宮崎 建物の平均築年数(平成24年度現在) 13.9年 年間利用者数(平成24年度) 357,819人 市負担額(平成24年度) 2億1,100万円 8位 施設名 阿波岐原森林公園 建物の平均築年数(平成24年度現在) 17年 年間利用者数(平成24年度) なし 市負担額(平成24年度) 3,781万円 9位 施設名 市総合体育館 建物の平均築年数(平成24年度現在) 13.8年 年間利用者数(平成24年度) 188,346人 市負担額(平成24年度) 1億8,289万円 10位 施設名 宮崎市民プラザ 建物の平均築年数(平成24年度現在) 12年 年間利用者数(平成24年度) 234,051人 市負担額(平成24年度) 1億9,449万円 11位 施設名 市総合福祉保健センター 建物の平均築年数(平成24年度現在) 18年 年間利用者数(平成24年度) 74,226人 市負担額(平成24年度) 1億8,289万円 12位 施設名 大淀川学習館 建物の平均築年数(平成24年度現在) 12.9年 年間利用者数(平成24年度) 168,863人 市負担額(平成24年度) 8,941万円 20位以下の施設※今回の特集で取り上げた施設を抜粋しています。 25位 施設名 みやざき歴史文化館 建物の平均築年数(平成24年度現在) 21年 年間利用者数(平成24年度) 58,246人 市負担額(平成24年度) 6,675万円 27位 施設名 いきめの杜ゆうこかん 建物の平均築年数(平成24年度現在) 3.9年 年間利用者数(平成24年度) 32,614人 市負担額(平成24年度) 6,278万円 33位 施設名 あまがじょう歴史民俗資料館 建物の平均築年数(平成24年度現在) 19年 年間利用者数(平成24年度) 21,121人 市負担額(平成24年度) 1,618万円 37位 施設名 きよたけ歴史館 建物の平均築年数(平成24年度現在) 11.3年 年間利用者数(平成24年度) 9,475人 市負担額(平成24年度) 1,595万円 40位 施設名 さどわら歴史資料館 建物の平均築年数(平成24年度現在) 17.8年 年間利用者数(平成24年度) 25,790人 市負担額(平成24年度) 2,863万円 46位 施設名 椿山キャンプ場 建物の平均築年数(平成24年度現在) 20.9年 年間利用者数(平成24年度) 1,614人 市負担額(平成24年度) 669万円 ※抜粋して、回答数の多かった順に並べています。(市ホームページで確認できます) 必要な公共施設を維持するための考え 「利用の少ない」「類似した」施設は見直しが必要、という声が多く聞かれています。 施設の見直し(経費や施設数の削減、民間活用など) 74.4% [430人] 使用料の値上げ 19.4% [112人] 分からない 3.1% [18人] 税金の投入 1.7% [10人] 無回答 1.4% [8人] 「施設の見直し」と答えた人に聞きました。 「どのような施設を見直せば良いと思いますか?」 利用の少ない施設 50.3%[244人] 県や市、民間との類似施設 24.1%[117人] 利用者が限定されている施設 11.1%[54人] 老朽化した施設 8.5%[41人] 市の負担額が高い施設 5.6%[27人] 分からない 0.4% [2人] Aさん 見直しが必要という声は多いんだね Bさん 見直しの具体例があるらしいわよ。詳しくみてみましょう [特集2]どうする?公共施設 公共施設の未来を考えよう! 将来を見据えた宮崎市づくりのために変わり始めた公共施設。 その中で、具体的なケースを紹介します。 処分(休止・売却など) Aさん 利用されない施設の費用はもったいないですもんね CASE1 施設を休止・売却 椿山キャンプ場  市民の森林利用と余暇活動を支援するために、平成3年に開設された「椿山キャンプ場」。収入が増えず、また木製建物の腐食や老朽化などが問題となっています。今後、大幅な修繕が見込まれるため、平成29年度から休止します。 宮崎市南消防署大塚出張所  昭和52年に開設された「大塚出張所」。現状では法律上の機能を有しておらず、水防倉庫として利用していました。しかし、他の消防施設と機能が重複していることや、老朽化が著しく進んでいることから、建物を処分(売却)します。 老朽化 利用者少 椿山キャンプ場[平成3年開設] 利用者人数 1,614人 (平成24年度) 市が負担した経費 約669万円 (平成24年度) 老朽化 機能重複 宮崎市南消防署大塚出張所[昭和52年開設] 利用者人数 なし (平成24年度) 市が負担した経費約75万円 (平成24年度) 街の皆さんの声を聞いてみました! 浦川さん 高齢者がもっと増え、働き手は都市に集中することを考えれば削減は必然 岡元さん夫妻 キャンプ場に毎年行っていたので、休止はとても残念です 関屋さん 古くて使われていないということであれば、休止でもいいと思います 松田さん 特定の目的のない公園などでも、いろんな使い道ができるので残してほしい 課題のある施設を見直して必要なサービスを向上させます。 財政課主査 鶴岡 修  建物の老朽化が進み、多額の修繕更新費用が見込まれる施設や利用者が少ない施設など、課題のある施設は見直し、できる限り民間に売却したいと考えています。売却した利益は、必要な市民サービスの向上に活用していきます。 再配置 Bさん 建物はなくなっても、機能がなくなるわけじゃないのね CASE2 機能を複合し移転 歴史資料館  歴史資料館とは、みやざき歴史文化館、いきめの杜ゆうこかん、さどわら歴史資料館、あまがじょう歴史民俗資料館、きよたけ歴史館の5施設のことです。  これらの施設は、歴史関係の文化財を展示する機能が重複している上、宮崎科学技術館や大淀川学習館などと比べると、ソフト面(利用頻度や市負担額など)が劣っています。3施設は築20年を経過し老朽化が見られることから、再配置計画(機能の統合など)を進めていきます。 青島保育所  築約40年の青島保育所は施設の老朽化に加え、南海トラフ巨大地震による津波の被害も想定されています。そこで、新たに高台に建設する複合型防災施設に、同地域内の老朽化した地域センター(庁舎)、公民館、児童センターとともに機能を移転します。 老朽化 費用多 みやざき歴史文化館[平成4年開設] 利用者人数 58,246人(平成24年度) 市が負担した経費 約6,675万円 (平成24年度) 必要性高 浸水被害 青島保育所[昭和49年開設] 利用者人数(月平均)33人 (平成24年度) 市が負担した経費 約5,163万円 (平成24年度) 街の皆さんの声を聞いてみました! 谷川さん やはり無駄をなくした効率的な運営が大事なのではないでしょうか 山口さん 無駄なものがあれば削ったり、一つにまとめたりしたほうがよいと思います 大石さん 近くの施設がなくなると不便だけど、車があるのでどこかに残ればOKかな 中島さん 削減や移転だけでなく、民間と協力するなど、新しい取り組みも必要では? 宮崎の未来を見据えて必要な施設は守っていきます。 財政課主査 鶴岡 修  全ての施設を将来にわたって維持できない状況なので、同じ機能(例えば、資料館の展示の機能)を持つ施設は、施設数を見直して機能をまとめていきます。しかし、南海トラフ巨大地震や少子高齢化の対策といった「将来世代に引き継ぐべき施設の機能」は、施設を建て替えてでも守っていきます。 専門家から見た宮崎 「公共施設=豊かさ」は間違いです 根本祐二東洋大学教授 1954年鹿児島県生まれ。1978年東京大学経済学部卒業、日本開発銀行入行。地域開発部、地域企画部長などを経て、2006年東洋大学経済学部教授に就任。  宮崎市は、市民一人当たりの施設量が多いです。一見豊かに見えますが、維持管理や改築の費用負担を市民自身がしなければならないことを忘れてはなりません。特に、1990年代バブル崩壊後の景気対策の時期に施設を作ったこと、全体計画を立てる前に老朽化した施設(市営住宅)の建て替えをすでに始めていることが大きな問題です。国は、今年度から公共施設等総合管理計画を立てるよう求めています。この機会を逃さず、抜本的に施設の在り方を見直すべきです。  施設があることが豊かなのではなく、施設が少なくても豊かな公共サービスは存在します。複数の市町村で一つの施設を共有する広域化、学校や市庁舎に公民館、図書館、保育所、デイケアセンターなどのさまざまな機能を取り込む多機能化、思い切って民間に譲渡し必要に応じて費用を補助するソフト化などが有効です。全てを維持できないことが分かれば、優先順位を付ける冷静な議論ができるはずです。  実は、ハコモノよりもインフラ(道路・橋・上下水道など)の方が市民の生命や生活に直結します。例えば、橋が落ちたり、上下水道が止まったりすれば大きな影響が出ます。まずは、インフラの安全を守ることを含めて、市民自ら何を優先するかを考える責任があります。多くの施設やインフラを維持したければ、自分たちで税金を出し合うべきです。他の地域の人が支払う税金や、子どもや孫が負担する借金を当てにして、自分たちの満足を高めようとするのはとても寂しいことだと思います。 Aさん Bさん 施設がなくなるのは寂しいけど、将来にわたって住みやすい街にするために、これからの公共施設の在り方について、みんなで考えていかなきゃね [アンケート]皆さんはどう思いますか? 宮崎市民の公共施設に対する思いをお聞かせください。特設サイト内のアンケートページへはこちらのQRコードからどうぞ。