特集1 キミにワザあり! −技能五輪全国大会入賞者スペシャルインタビュー−  皆さんは、技能五輪をご存じですか? 宮崎市には、23歳以下の人が技能を競う技能五輪で、優秀な成績をあげている若者がいます。その裏側には、鍛錬を続ける若者の強い意思と、それを支える先輩の温かいまなざしがありました。 問い合わせ先 商業労政課 電話21-1792 ファックス番号28-6572 Part.1 レストランサービスで「ワザあり!」  レストランサービス部門で7年にわたり技能五輪に参加している宮崎観光ホテル。昨年の世界大会出場者と、全国大会入賞者2人に話を聞きました。 やなぎばしあんなさん(21歳) 平成25年4月入社。平成26年8月からレストラン課「リンファ」配属。第52回技能五輪全国大会レストランサービス部門敢闘賞、第43回技能五輪国際大会ブラジルサンパウロ大会同部門出場。 後に続く人材に私の経験を伝えたい とだかあすかさん(23歳) 平成23年4月入社。平成27年4月からレストラン課「ディアマン・ルージュ」配属。第53回技能五輪全国大会レストランサービス部門銅賞。2級レストランサービス技能士。 もっと知識を身に付けて将来は指導的立場に むこうたかこゆきさん(23歳) 平成23年4月入社。平成24年4月からレストラン課「ディアマン・ルージュ」配属。第52回技能五輪全国大会レストランサービス部門銀賞、第53回同部門金賞。2級レストランサービス技能士。 身に付けた技能でお客様に至福のひと時を 受賞者の名に恥じないよう 人としてもっと成長したい。 初めて知るレストランサービスお客様との接点にやりがい —皆さんは、就職前からレストランサービスに憧れていたのですか? むこうたかさん 私は航空業界やホテル業界を目指していましたが、ホテルの仕事といえばフロントぐらいしか思い浮かびませんでした。 やなぎばしさん 私ももともとホテルには宿泊のイメージしかなく、研修中に複数の部門を回る中でレストランサービスに憧れるようになりました。 とだかさん 私は、バンケット部門で働いている中で、レストランサービスの先輩の姿がとてもかっこよく、刺激を受けたのが始まりです。 —実際に働く中で、仕事にはどんな印象を抱くようになりましたか? やなぎばしレストランサービスは通常営業から婚礼まで、たくさんのお客様と幅広く接することができるので、とてもやりがいがあります。 むこうたか本当にそうですね。それだけに難しいところもあります。 やなぎばし一番難しいのは、お客様が私たちに対して何を求めているのかを的確に察知することですね。 とだか接待ならよりスマートなサービス、記念日ならサプライズの演出をするなど、お客様の雰囲気に合わせたおもてなしが大切だと感じています。 技能の向上に精進 経験を生かしていきたい —技能五輪ではテーブルセッティングやワイン、カクテルなどのサービスの正確さや美しさが審査されたそうですが、模擬客への接し方も審査対象だったと聞きました。 とだかはい。模擬客の人も緊張されていたので、会話でリラックスしていただけるよう心掛けました。 むこうたか私とやなぎばしさんは一昨年も出場したので、昨年が初出場だったとだかさんにはそうした雰囲気や審査の流れなどを伝えました。 とだかおかげですごくやりやすかったです! —やなぎばしさんは昨年ブラジルで行われた国際大会で大きなレベルの違いを感じたそうですね。 やなぎばし髪型や服装などの身だしなみが完璧なのはもちろん、競技以外の時間も誰一人気を緩めることなく、堂々と振る舞っていました。後に続く宮崎の人材に、私ができなかったことや気付いたことをしっかり伝えたいです。 むこうたか技能五輪出場の際は、優勝を願って見守ってくれる人たちの応援がとても励みになりました。私も、受賞者の名に恥じないよう、これからは人としても成長しながら、この経験を後輩に伝えていき、宮崎の技能の発展に貢献していきたいです。 とだか私も同じ気持ちです。もっと勉強して知識を身に付け、指導的な立場で後輩にどんどんアドバイスしていきたいと思います。 技能五輪って? 世界への扉も開かれた技能者の祭典  技能五輪とは、とび、左官、家具やレストランサービスといったさまざまな職種の技能を青年技能者が競い合う大会です。毎年行われる全国大会は23歳まで、2年に1度行われる国際大会は22歳までを対象としています。昨年行われた第53回全国大会では、全国から41職種、1000人を超える若者が集まり、日ごろの鍛錬の成果を競い合いました。宮崎市からは4つの職種に5人が参加し、全員が敢闘賞以上に入賞しました。 競技中のむこうたかさん。模擬客を相手に緊張の面持ちです。 会場は誰でも見学可能とあって多くの人出となりました。 指導者に聞きました 若手の活躍でさらなるレベルアップを  私が指導を始めた当初は、全国レベルと比べて、技術、そしておもてなしの心などが低い水準にありました。そのため、まずはサービスの楽しさを教えて基礎を徹底的に習得。それから技術を身に付けることにより、自信とプライドを持ったプロに成長してくれました。6年前には技能五輪全国大会にスタッフが初めて入賞し、宮崎でも質の高いサービスが提供できることを全国に証明しました。今回の受賞者は講師として、県内の同業の皆さんにその技術を伝える役割を担っています。若手の活躍で、宮崎全体のサービスのレベルがどんどん上がっていくことを期待しています。 若手が自信をもって仕事できる場を作っていきたいです。 宮崎観光ホテル 執行役員副総支配人 髙木直幸さん Part.2 ものづくりで「ワザあり!」  後継者不足が課題となっているものづくり業界。ここでは、昨年の技能五輪全国大会で入賞した、左官、家具、とびの各部門代表に話を聞きました。 左官 おのたつゆきさん(20歳) 有限会社岩佐工業勤務。第53回技能五輪全国大会左官部門で銅賞を受賞。 仕事ぶりに説得力を持ち後輩が付いてくる人材に  母と社長が知人だったことや、体を動かすのが好きだということもあって、この仕事を始めました。普段は建築中の建物の壁などに、こてを使ってモルタルなどを塗り仕上げています。技能五輪は会社の先輩が代々参加し続けていて、見学に連れて行ってもらったことがあり、その時に自分でもやってみたい!と感じました。仕事終わりの練習のほか、会社には仕事と並行して宮崎高等技術専門校にも通わせてもらい、とても感謝しています。  次の技能五輪にもぜひ出場して金賞を取りたいですし、誰よりも上手くなりたいです。そして、後輩に対して説得力があり、みんながついて来てくれるような人材になりたいと思います。 [指導者] 岩佐富士夫さん  左官は、その上に入る塗装などの基礎を作るのが役目。それだけに仕事は絶対にきっちりしなくてはなりません。彼はそれを普段の生活でも心掛けているところが素晴らしいです。 家具 つちもちこうせいさん(21歳) 有限会社ファーニチャー横山勤務。第53回技能五輪全国大会家具部門で敢闘賞を受賞。 寸法通りに美しく仕上げる一流の職人を目指したい  小さい頃から家業を見ていて、ものづくりへの憧れを抱いていました。自分の技に手応えを得たのは専門学校で、木材をどこまで薄く削れるかを競う機会があり、1000分の6ミリという記録が出せた時でした。同じ業界を志す仲間と出会うことができ、在学中に出場した技能五輪では家具職人でも技能を競える機会があることも知れたので、よかったと思います。  技能五輪には次も挑戦したいですし、その上に熟練技能士が日本一を競い合う技能グランプリという大会もあるので、1級家具製作技能士資格を取得して、そこにも挑戦したいです。寸法通りに家具や建具を仕上げられる一流の職人を目指して精進していきます。 [指導者] つちもち武美さん  技能五輪は若手が技能を磨ける貴重な舞台。彼のような受賞経験のある職人がもっと評価されるよう、技能五輪のことをもっと周知していくのも私たちの役目だと感じています。 とび ふるかわるいさん(21歳) 有限会社吉村工業勤務。第53回技能五輪全国大会とび部門で敢闘賞を受賞。 モノを作る前の最初の仕事 それを手掛けられるのが幸せ  今年で入社4年目。中学校のころから高い所で仕事をする様子がかっこいいなと思っていて、迷いなく志望しました。普段は足場や仮囲いなどを組み上げる仕事をしています。  技能五輪では、制限時間内(4時間45分)に一人で大きな足場を組み上げ、その精度を競うという課題が出され、2か月前に課題が公開されてからは、毎日仕事が終わった後に練習を重ねました。本番では緊張してしまい、練習の成果を十分に発揮できませんでしたが、モノを作る前の最初の仕事ができるこの職業に喜びを感じています。今後は1級とび技能士資格の取得にチャレンジしながら、先輩からもっと技術を盗んで成長したいと思います。 [指導者] 清水かつゆきさん 10から20代の担い手が不足している中、彼は貴重な存在。当然ながら課題はたくさんありますが、礼儀正しいし、吸収も早い。彼が働きやすい環境を作ることが、私たちの役割だと感じています。 DATAで見る若者就職事情 若者の多くが県外に出て離職率も高い  宮崎の将来を担う若者の多くが、大学や高校卒業と同時に県外に出ているほか、3年以内に離職する割合も全国平均に比べて高いことがわかっています。県外への転出や離職の理由はさまざまですが、少子高齢化の加速に伴い、さらなる労働不足が懸念される中、企業や教育機関などが一体となって、宮崎で働く意義や地元企業の魅力などを積極的に発信していくことが求められます。 新規高卒者の卒業後 3年以内の離職率(平成24年3月卒業) 全国 40.0% 宮崎県 47.2% [資料出所]厚生労働省(宮崎労働局) 新規高卒者の県内就職率(平成27年3月卒業) 全国 81.6% 宮崎県 54.0% [資料出所]平成27年度学校基本調査 知ってほしい、宮崎の人材育成 宮崎でもあなたの輝ける場所が見つかる  自分の仕事に誇りを持ち、技能の向上に向けて日々努力している宮崎市の若者たちが、全国の舞台で輝かしい成績を収めています。そして、その若者を育てているのは、企業の理解や努力、訓練校などの技術を学ぶ場です。  ものづくりは暮らしの根本にある大切な仕事であり、機械化が進む中、ますますその重要性が増しています。一方で、宮崎市では若者の早期離職や県外流出に歯止めがかからず、この大切な技能の維持・継承が危惧されています。  そのような中で、宮崎には「ものづくりの技能は嘘をつかない」と、技能の修練に励む若者がいること、また、その若者を全力で支える企業がいることを、ぜひ皆さんに知っていただきたいです。 あなたも輝く技能者を目指しませんか。 商業労政課 主任主事 時任亜里沙 「ワザあり」な若手を育成しています! 宮崎高等技術専門校 電話52-5583 ファックス番号53-4950  宮崎高等技術専門校は、県内の若手技能者に技能を伝承し、産業の活性化に貢献することを目的に、昭和25年に設立されました。加盟する企業で仕事をしながら、2から3年間にわたって技能を学ぶ普通課程では、木造建築、建築塗装、左官・タイル施工という科目に約15人(平成28年4月時点)が在籍。経験豊富な講師陣が実技や座学で指導にあたっています。  「最近の学生は、技能士の国家資格を取得したいと明確な目標を掲げて入学してくる意欲的な人材ばかり。技能五輪でも受賞者が出るなど、頼もしい限りです」と副校長の北川治さんも笑みを浮かべます。専門校では技能士資格のさらなる浸透や、企業側でのよりよい労働環境作りなどにも努めていく予定です。 左官・タイル施工科