
湯気と野菜と水餃子

旬野菜とスパイスで無限に広がるアレンジ

古い建具のドアをガラガラとあけると、木のカウンター越しに元気のよい店主が迎えてくれた。餃子を茹でる鉄鍋やパオズ包子を蒸す蒸篭から立ち上る湯気と、ガラス窓から差し込む陽があたたかい。黒板にかかれたメニューを見ながら何を頼もうか考えていると、7席しかないお店は、あっという間にお客さんでいっぱいになった。定食は黒米ご飯と鶏ガラだしの効いた卵のスープ、それから日替わり野菜のおかず3種をカウンターに並んだ大皿から装ってくれる。それらを頂いているうちに、奥の方で茹で上がったばかりのつやつやで熱々の水餃子がやってきた。

7席のみのため、予約は受け付けていない。
店主が毎朝、手ごねで作る皮はぷっくりもちもち。小麦は九州産の石臼挽きの粉を使用。定番とアレンジ水餃子が3つずつ入っている。中身の餡は、綾町産ぶどう豚の挽肉のジューシーな旨味と、野菜の食感や香りが楽しくさっぱりしている。タレは酢醤油と自家製ラー油、それと少し酸味のある自家製味噌ダレの2種類をお好みで。アレンジ餃子は、その時々の旬の野菜とスパイスや香菜などを組み合わせるから、その種類は無限に広がっていく。時にはキュウリのアレンジ餃子を出して驚かれたこともあったが、また食べたいと評判だったそうだ。
野菜を食べてほしくて、餃子だって思った

冬季限定の黒糖あんや豚角煮の包子などは、テイクアウトも可。
店主の後藤久美子さんは、20代を東京で過ごし長くファッションの世界にいた。帰郷して出産を経験。子育てをするうちに、食の大切さと宮崎の野菜の美味しさに魅了された。野菜のことを学ぶために農園で働いたり、小麦の扱いを学ぶためにパン屋さんで働いた。「どうやったら野菜を美味しくたくさん食べられるのか考えていて、あるとき餃子だ!って思ったんです」。できるだけ県内産の素材にこだわり、野菜は以前働いていた農園や知り合いの農園から、その時の旬の野菜を仕入れる。「季節によっては野菜がない時期もあったりもするけど、それはそれで乾物や豆腐などを工夫して使ったり、そうすると料理の幅が広がるんです。逆に野菜がもりもり採れる時期は、野菜に追われたりして…笑」。 とにかくよく働き、季節の花などお店の隅々まで気配りを忘れない。訪れた人はきっと元気をもらえるお店だ。