
宮崎最古の洋酒バー

トリスの歴史とともに
昭和31年から64年もの間、宮崎市の飲食店街ニシタチを見守り続けているバーがある。赤いネオンサインが輝く赤いレンガの壁に一体何人の人が開けただろう歴史を感じる木の扉。まるでタイムスリップしたかのような雰囲気が漂う。店内に入ると奥に広がる木のカウンター、その前には止まり木が15席。静かにジャズが流れ、7つのランプが優しく灯っている。
白いワイシャツに蝶ネクタイ、クラシックなスタイルが粋なマスターはすでに飲み始めていた。「飲まないと調子がでないからね。ジョッキでビール2杯目なんだけど、、、まだまだこれからですよ(笑)」と初来店の緊張を解いてくれるかのように、やさしい笑顔で出迎えてくれた。

マスター松山春喜さんが先代から引き継いで45年が経つ
1950年代の高度経済成長期に続々登場したトリスバー。最盛期には全国で約1800店、ハイボールやホットウイスキー、リキュールを使ったカクテルなどを提供し日本に洋酒文化が広まっていった。
現在、トリスバーの看板を掲げているバーは残り少なく、「赤煉瓦」は貴重な1軒となった。
歴史ある雰囲気の中、しっとりと時には賑やかに洋酒を堪能する。今日もお客さんの数だけドラマが生まれる。
名バーテンダーが奏でるカクテル

マスター自信作のカクテルをお願いすると目が覚めるような美しいカクテルを作ってくれた。シェーカーを軽やかに振り、氷で冷やしたグラスに注ぐとグレープフルーツのフレッシュな香りがカウンターに弾けて、しばらく香りを漂わせてくれる。グラスの淵にはチョウチョがとまっている。そのカクテルは『イエローガーデン』。「日本で作られた世界初の黄色いコスモスの名前です。涼風に揺らぐその容姿は明るく、爽やかで、恋人でもあるかのようで。それをイメージしながら作りました」と話てくれた。

色鮮やかなカクテル、心も晴れる
次は森の調べというイメージで奏でた『ウッドノート』というオリジナルカクテルを。キウイやペパーミントのリキュールで作られている。瑞々しく爽やかなミントの香りが鼻を抜け、僅かにキウイの甘みが残った。これはメーカーやバーテンダー協会が主催するコンペティションの九州・沖縄代表に選ばれた時、東京の帝国ホテルでシェーカーを振ったという思い出のオリジナルカクテルなのだそうだ。
シャキシャキのリンゴにチーズがサンドしてある『リンゴチーズサンド』と、ラム酒に漬け込んだレーズンで作っているという『レーズンバター』をたのんでみる。おつまみもオリジナル。どちらも最高においしく相性がよい。
赤いネオンサインの灯が消え、思い思いに家路につく。訪れた人々の幸せな1日が終わる。