
チキン南蛮、創成期の味

レジェンドが作るチキン南蛮
一番街のアーケードを抜けると、ウエストビルという古いビルがある。昔はここに東映会館という街の映画館があった。今でもその面影を残すビルの一階に、当時から続く洋食屋さん爛漫がある。名物料理はチキン南蛮だが、爛漫のチキン南蛮はちょっと特別なのである。

御歳78才。今でも現役で厨房に立ち続けている。
チキン南蛮が誕生したのは、昭和40年ごろ。当時宮崎市内にあった洋食店ロンドンで、揚げた鶏肉に甘酢を絡め、タルタルソースをかけた現在の形が生まれたと言われている。爛漫のマスター、松田誠喜さんはその当時、ロンドンで厨房を任されており、チキン南蛮の開発に深く関わったと人物だ。その後独立し、現在の場所に爛漫をオープン。チキン南蛮は、作り方・味を40年もの間変わらずに守り続けてきた。このお店では、誕生した当時の味のチキン南蛮が食べられるのだ。
家族で守る味
爛漫のチキン南蛮は、丸鶏を捌くところからはじまる。一般的なブロイラーの半分ほどの大きさの若鶏の半身(むね肉)を丸々使用する。丸鶏を捌くというよりは骨を外すように丁寧に一枚に仕上げていく。下味を整え、小麦粉をまぶして卵にくぐらせ、油で揚げる。それから、スパイスや香辛料、レモンやしょうがなどが入った独自の南蛮酢にくぐらせ、タルタルソースをかけて出来上がりだ。タルタルソースはマヨネーズから手作りしている。180gほどの大きなチキン南蛮に驚く人もいるが、大抵ペロッと完食してしまう。ほのかにスパイス香る南蛮酢と、タルタルソース、柔らかくてジューシーだけどさっぱりしたむね肉のバランスがとても良い。

むね肉のチキン南蛮は数に限りがあるため、仕込み分が完売すると終了。
終了後はもも肉の南蛮は提供可能。
現在、お店はマスターと二人の息子さんで切り盛りしている。マスター似の寡黙な次男善道さんが厨房を、社交的でスマートな物腰の長男貴道さんがホールを担当。以前は東京でそれぞれ別の仕事をしていた二人だが、ある時、馴染みのお店が後継者がおらず閉店していくのを見ていて、ふと、父親のお店を継ごうと思ったのだそうだ。多くを語らないマスターの背中を追いかけて、兄弟二人、爛漫の味を守っていくのだろう。
