
この酒場、えらんだあなたは呑み上手。

疲れ(だれ)をやめる、だれやめ

午後17時、少し早い時間だが提灯の明かりとその佇まいに心惹かれたお店があった。暖簾をくぐってみると、そこは何とも熱気に満ちた酒場だった。このあたりの人々は、早い時間から呑むことを「だれやめ」とか「ゼロ次会」とか言うらしい。仕事帰りのような人や、何時から呑んでいたのかと思うほどに出来上がっている人たち、ただひとり静かに呑む老人。昔ながらの常連さん達に混じってカウンターに座り、とりあえずの得々セットが目に入ったので頼んでみる。生ビールと季節の料理が2品ついて1100円。この日は焼きサンマと揚げたてほくほくのサツマイモの天ぷらだった。キンキンに冷えたビールをすぐ出してくれるのも嬉しい。

それから、たかさご名物モツ煮込みも追加。程よい柔らかさのモツと、大根やこんにゃくにみそ味がよく染みていて、後からくる少しピリっとした辛さでビールが進む。そうやっているうちに、まだ日も暮れる前だが、続々と吸い込まれるように人びとが暖簾をくぐってやってくる。

これこれ!が聞こえてくる
それにしても、この店の品数の多いこと!そのどれもが酒呑み達がこれこれ!とニンマリするような品ばかりだ。メヒカリの唐揚げに、都萬(とまん)牛のスジ煮込み、椎茸南蛮にうずらの照焼など、地元の名産品を使った料理も多く、宮崎の郷土料理を味わいたい人にも嬉しいメニューが揃う。佐土原ナスの辛子漬けを頼む人はご覚悟を。のけぞるほどにツーンとした辛さに襲われ、涙を流す人もいるだろう。ふと、皆どんなものを酒のあてにしているのか気になった。刺身と焼酎の人もいれば、あんかけ焼きそばにハイボールの人もいる。カウンター中央のおでん鍋から、いくつかおでんを装ってもらう人もいる。どの人も、いたずらに何品もいっぺんに頼んだりしない。一品ずつ酒と一緒に味わっているようだった。ここは呑み上手が集う酒場だ。
