1960年には約600万ヘクタールあった日本の農地は、宅地等への転用や荒廃農地の発生等によ り、現在、約440万ヘクタールと大幅に減少した。農業の現場では、従事者の高齢化や、担い手不 足などの課題から、農地の減少は止められない状況である。耕作が放棄された農地は数年で抜根や整 地が必要な荒廃農地となり、やがて森林の様相を呈するなど農地としての復元が困難になる。そして 今、この再生利用が困難な荒廃農地は約20万ヘクタールとなっている。 近年、世界的な規模での感染症の蔓延、異常気象による作物の凶作、さらに不安定な国際情勢等も踏 まえ、不測の事態に備えた食料安全保障を見据えて、荒廃農地の発生防止と解消は重要な課題である。 この課題解決に向けて、農村部では農地中間管理機構による農地の集積・集約や、民間企業等の農業 参入等を積極的に進めようとしているが、その担い手の確保が困難な状況となっている。実際に、我 が国の農家人口は、1990年から2000年の10年間で2割以上減少しており、農業地域類型別 では都市的地域の減少割合が大きい。 一方で都市部の農地は、2017年に生産緑地法の改正を受けて、民間企業等への農地の貸借による 担い手の確保により、生産緑地の約9割が特定生産緑地へ移行される中で、市民農園の整備等による 農地の保全が積極的に進められている状況である。 そこで、政府においては、地方自治体と民間企業等との連携を強化しながら、農業地域における半農 半Xの農業人材の創出や市民農園の普及拡大等、国民が農地の保全と活用のための活動に参入し易い 環境の整備と予算の拡充を強く求める。
記
1 農用地区域の農業用施設用地への転用特例に、農家レストランや農業用施設等に加え、地方自治体 と民間企業等の連携のもとでの半農半Xの人材確保を促すサテライトオフィスや宿泊施設等の整備も加 えると共に、地方の農地における日帰り型市民農園や滞在型市民農園の整備促進を図ること。 2 総務省と厚生労働省において別個に実施しているテレワークに関する個別相談事業を統合し、ワン ストップの支援窓口を設置するとともに、各地域での農地の貸付を促す情報を提供するなど、国と地方 自治体と民間企業等の連携によるテレワークと農業の融合政策を積極的に推進すること。 3 荒廃農地にコスモスやひまわりを植える等により農地の保全を支援することによる景観形成活動に 利用できる「多面的機能支払交付金」、また荒廃農地にレンゲを植える等により農地の保全を支援する 「農山漁村振興交付金」の最適土地利用対策について、民間企業等への適用範囲の拡大と共に、予算の 拡充を図ること。 4 人口急減に直面している地域において地域産業の担い手を確保するための「特定地域づくり事業推 進交付金」の自治体と民間企業等の連携のもとでの活用や、荒廃農地を民間企業等が活用し燃料用植物 の栽培等を推進した「耕作放棄地再生利用緊急対策交付金」について制度の再整備を検討すること。 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和4年9月22日
宮 崎 市 議 会
総務大臣 農林水産大臣 国土交通大臣 デジタル田園都市国家構想担当 殿